製造物責任法(PL法)について
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製造物責任法(PL法)の施行

1990年頃から法制化が検討されていた製造物責任法が、1994年7月1日に公布、1995年7月1日に施行となりました。
この法律は、全文で6条からなっており、欠陥(無過失)責任法理や当該製造物が「通常有すべき安全性を欠いていること」をもって欠陥とする欠陥の認定基準が導入されています。

(1)製造物責任(Products Liability)とは

 「製造物責任」とは、米国から1960年初頭に入ってきた「P.L.(Products Liability)」の訳語であり、製品の欠陥により、消費者・利用者などの第三者が生命・身体または財物について生じた損害について、当該欠陥製品の製造流通等に関与した者が負う損害賠償責任のことをいいます。

(2)法制化の背景
法制化となった背景として以下の4つがあげられます。

A.消費者保護の充実と促進
欧米諸国同様、消費者保護の促進と充実という観点から立法の要請がなされており、従来までの過失責任主義から欠陥責任主義へ移行する事によって、被害者の証明責任の緩和をはかることができる。
B.各国の法制化の動き
欧米諸国をはじめ、我が国を除く先進国で製造物責任法が立法化されていることから、国際協調の観点からも法の枠組み作りの必要性が叫ばれた。
C.規制緩和に伴う企業の自己責任原則の確立
日米非関税障壁問題による規制緩和に対応し、企業の製品に対する安全性・品質確保のインセンティブを高めるために製品欠陥に対する企業責任の厳格化を図る必要性が指摘され、企業自体の自己責任の確立に対する要請もなされた。
D.マスコミ報道の変化
従来のPL事故は公害のような集団訴訟による者が多く、それ以外の個別の事故についてはマスコミも大きな取りあけ方をしなかった。しかし、近年は消費者の意識変化に伴い、従来誤使用と報道されていた製品事故までも製造者の責任を問うPL事故として大きく取り上げられるようになってきた。

製造物責任法(PL法)の解説

  製造物責任法は全6条から成っており、実際の裁判上における裁判官の裁量に委ねる部分が大きい内容となっています。この法律の他に、血液製剤に関する取り扱いや事故の原因究明機関、裁判外紛争処理機関の方向性を示した付帯決議も出されています。

法律のポイント 内         容
1.対象製品
  (第2条第1項)
この法律で対象になる物は製造または加工された動産となる。
<解説>
・未加工品である第一次農産物、水産物は対象外となっている。
・無体物であるサービス、情報、ソフトウエア等は対象外となっている。
・不動産については、この法律の対象がとなっているが、照明器具やユニットバスなどの住宅部品は対象となる。
・部品・原材料に関しては、最終製品の欠陥がそれらの欠陥に起因する場合で、部品・原材料の製造業者に過失が認められる場合のみ対象となっている。
2.製造業者の範囲
  =責任主体
  (第2条第3項)
この法律の責任主体は、製造業者、加工業者、輸入業者となる。
上記以外に製造業者として氏名等を表示した者、製造業者と誤認されるような表示をした者と種々な事情から実質的に製造者と認められる者が対象となる。
<解説>
・輸入業者の責任については、本来の責任主体は製造業者であるものの、一般の消費者が海外の製造業者に直接請求することは難しいため、被害者救済の観点から輸入業者を製造業者と見なして責任を負わせている。
・販売者に関しては、対象外となっています。ただし、氏名等を表示して「製造者と誤認されるような場合」や「実質的な製造者として認めることが出きる場合」は対象となっており、例えば、プライベートブランドを有するような百貨店・スーパーなどは責任を負うことも考えられる。
・OEM製品のブランドメーカーも、製造物に商標等を明示するため、この法律の対象となる。
3.欠陥製品の導入
  (第1条第3項)
「過失」の存在ではなく製品そのものに「欠陥」があったこと、およびその欠陥が原因で損害が生じたこと(損害の発生、欠陥と損害の因果関係)を被害者が証明しさえすれば、製造業者に責任を認める(「欠陥責任(無過失責任)」)という考え方が導入される。
<解説>
従来、日本の法制度の下においては、被害者である消費者は主に民法第709条の「不法行為責任」に基づいて賠償請求を行ってきた。この場合、被害者は加害者である製造業者等の「過失」を証明することが必要になりますが、技術的に素人である消費者が高度かつ複雑な現在の流通過程における製造業者等の過失を証明することは非常に困難だった。
これにより、被害者の立証負担は軽減され、製品事故による損害賠償請求が従来に比べて容易に行えるようになった。
4.欠陥概念の定義
  (第2条第2項)
この法律において欠陥とは、当該製造物の特性、通常予見される使用形態、製造者等が当該製造物を引き渡した時期、その当該製造物にかかわる事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。
<解説>
従来、日本において欠陥製品といえば、主に製造上の欠陥を持って製品の欠陥と認定する考え方が支配的だった。すなわち、品質管理や検査の不備により、国や公的機関が定める安全基準、業界や企業の自主品質基準を充足しない製品が市場に出て事故を起こした場合に、それらを欠陥製品と認定して、製造業者等に責任を問う「標準逸脱基準」という考え方が採られていた。
今回のPL法においては、欠陥概念が「通常有すべき安全性を欠いていること」と定義されている。これは欧米で既に導入されている「消費者期待基準」と同様の考え方であり、「通常の消費者(使用者)が期待する安全性」を基準にして製品の欠陥が判断されることになる。
製造上の欠陥のみならず、設計時における安全上の配慮不足、取扱説明書や警告表示の不備に関しても、それらが製品の欠陥と見なされ、製造者等の責任が問われることが多くなると考えられる。
5.免責事由
  (第4条第1〜2項)
第1項では「開発危険の抗弁」を認めている。この法律においては、「製品引渡時における科学または技術に関する知見によっては欠陥の認識ができなかったことを製造者等が証明すれば免責」として、抗弁が認められることになった。
第2項では、部品・原材料について「その欠陥が他の製造者(完成品メーカー等)が行った設計に関する指示により生じた場合で、当該部品・原材料の製造者に過失がない場合は部品・原材料の製造者は免責」としており、部品・原材料メーカーが無過失を証明することにより責任を免除しています。
<解説>
この「開発危険の抗弁」とは、「製品開発当時の科学・技術水準の下では認識し得なかった危険(開発危険)であったことを製造者等が立証すれば責任を問われない」とする考え方をいう。
開発危険による被害まで企業側に責任を負わせるとすれば、新製品開発の意欲をそぐことになりかねず、社会経済的にも損失が大きいことが予想されるため、この抗弁が認められた。
部品・原材料製造者に関する免責規定は、部品メーカーと完成品メーカーとの責任関係を明確にしたものである。
部品メーカーと完成品メーカーが部品について共同設計を行う場合には、部品メーカーも独自の責任を負うことになる。
6.損害賠償の範囲
  (第3条)
この法律の損害賠償の範囲は、製品の欠陥によって、人がケガをしたり、死亡したりといった身体侵害、および住宅が焼けてしまったといったような財物侵害が対象とされている。
<解説>
・事業者の被った財物損害も対象となることに注意が必要である。
・製造物についてのみ生じた損害については対象外である。
7.期間の制限
  (第5条第1〜2項)
被害者が損害および賠償義務者を知ったときから3年以内に賠償請求を行わなければ請求権は消滅することになっている(消滅時効)。また、製品を引き渡したときから10年を経過した場合については、本法に基づく製造物責任は問われないことになっている(責任期間)。
身体に蓄積した場合に人の健康を害することになる物質による損害または一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害についての責任期間は、損害が生じたときから起算して10年を経過した場合、本法に基づく製造物責任は問われないことになっている。
<解説>
・「責任期間」は、製造者等が無期限に責任を問われることを避ける意味から、規定されている。
・責任期間経過後の製品においては民法第709条の不法行為責任に基づき、責任が問われることになる。(ただし、不法行為の時から20年が限度)
8.「推定規定」の未導入 欠陥の存在について「推定規定」の導入も検討されたが、先送りになった。
欠陥の存在についての「推定規定」とは、「製品を適正に使用していたにもかかわらず事故が起きた場合、製品に欠陥が存在したと推定し、被害者が欠陥の存在を証明ぜずとも加害者に責任を負わせる」という考え方である。
「推定規定」が導入されれば、製造者等は非常に厳しい責任を問われることとなるが、今回のPL法においては、「推定規定」の導入は見送られることになった。

PLに関わる責任法理

 我が国において、製品の欠陥により身体障害、財物損壊等の拡大損害を被った場合、その被害者は、次のような国内法を根拠に製造者等に対して賠償請求を提訴することができます。

(1)欠陥(無過失)責任(製造物責任法)

A.欠陥(無過失)責任
従来の不法行為法では「過失責任」を採用しており、技術的に素人である被害者にメーカー等の過失について証明責任を負わせていたため、被害者救済が十分になされていないという批判がありました。そこで、製造物責任法では、被害者救済の観点から、「欠陥(無過失)責任」を採用しています。
B.被害者である消費者が立証すべき要件
欠陥の存在
損害の発生および欠陥と損害の因果関係の存在

(2)不法行為責任(民法)

A.不法行為責任の内容
民法第709条を根拠法規とし、当該製品に起因する損害につき被害者が製造者等の過失を立証した場合、製造者等が責任を負うというもの。
不法行為責任は、消費者と製造者・販売者との間に「契約関係」の存在が不要なため、被害者である消費者が直接製造者等を訴えることができますが、何ら専門知識を有しない被害者が加害者の過失を立証することは極めて困難であり、十分な被害者の救済が行えないという批判があります。
B.被害者である消費者が立証すべき要件
製造者等の過失の存在
損害の発生および製造者等の過失と損害の因果関係の存在

(3)債務不履行責任(民法)

A.債務不履行責任の内容
民法第415条を根拠法規とするもので、消費者が売買契約等の「契約関係」にある製造・販売者等を訴えた場合、製造者側が自分に過失がないことを立証しない限り、製造者側が責任を負うというものです。
債務不履行責任は、過失についての立証責任を製造・販売者側が負っており、被害者の立証責任の負担が軽い反面、契約関係の存在が前提になっているため、契約関係の存在しない製造者に対し、被害者である消費者が直接請求できないという特徴もあります。
B.被害者である消費者が立証すべき要件
被害者と販売者等の間の契約関係の存在
損害の発生(ただし、製造者側に過失が無いことについては、製造・販売者等の加害者が立証しなければならない)
販売者にも法的責任?
 製造物責任法(PL法)の対象外である責任主体、対象製造物についても法的責任が問われる可能性があるので注意が必要です。
たとえば販売者については、消費者との間に通常、契約関係が成立する場合が多いことから、民法415条の「債務不履行責任」の適用により責任を問われることがあります。この場合、責任主体(販売者)が自ら過失が無いことを証明しない限り賠償責任を負うこととされているため、従来から厳しい責任が課されています。今後、PL法の施行に伴う消費者意識の高まりなどにより、販売者等に対する潜在的なクレームが顕在化することも予想されます。

PL法施行の影響と企業の対応策

(1)PL法施行の影響

  今回の法施行によって、一部では、米国のような濫訴や賠償金額の高額化を懸念する声もありますが、米国と我が国では司法制度や社会制度が大幅に異なることから、直ちに我が国が米国と同じ様な状況に陥ることはあり得ないと考えられます。
1988年以降製造物責任法が施行されている欧州諸国では、現在までのところ、それに伴う訴訟件数の増加等の大きな変化は報告されていません。
 したがって、EC型と言われる我が国の製造物責任法が施行されても司法制度等に大きな変更がない限り、短期的に見れば訴訟が大幅に増加するなどの影響はあまり無いと予測されます。
  しかし、製造物責任法の施行に伴うアナウンスメント効果により、消費者の意識は確実に変化していると思われますので、潜在的な製品クレームの顕在化に備え適業として対策を講じることが必要です。

(2)企業において講ずべき対策
上記の海外の施行後の状況を踏まえ、企業は

A. PL問題に巻き込まれた場合の損害てん補
B. PL危険回避の対策
C. 消費者クレームに対する社内の対応組織の確率を図る必要があります。
A.については、「国内PL保険(生産物賠償責任保険)」の採用につき検討することが必要となります。なお、PL法においても、従来と同様に企業の損害をカバーすることが可能であり、損害補填措置ととして有効な手段です。
また、B.とC.については、法が施行された欧米諸国でも、製品の取扱説明書の改善や製品回収の件数の増加、製品事故の予防について企業の対応が進んでいることから、日本企業においてもPL予防対策の推進が重要になるのは明らかです。